ねつ野菜
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2017年度 野菜セット発送終了のお知らせ

皆様

いつも、大変お世話になっております!

2017年度の野菜セット、昨日を持ちまして、おかげさまで発送終了となりました!
今年度もどうにか、生き延びることが出来ました。
ご支援、御協力頂き、心より感謝致します。

今年度は、夏は天国、冬は地獄と、はっきりと明暗が別れた年でした。

雨がほとんど降らず、ひたすら陽の光を溜め込んだミニトマトは最高の出来で、畑でいくらつまみ食いしても減らず、連日嬉しい悲鳴をあげておりました。
残念なのは、生産に需要が追いつかず、自家消費ばかりが爆発的に増えたことでしょうか…

反対に、秋冬の天候不良たるや。
さんざん愚痴ったので詳細は省きますが、僕の落胆以上に、記録的な不作による世間全体のショックは大きいようで…先日、白菜がひと球900円を超えたという報道がありました。
生産者目線で見れば、まあ、そうなるわな…という肌感覚です。いやはや、すごい年でした。

毎年思い切った実験を繰り返すのがうちの定番となりつつあるのですが、今年は思い切り肥料分をカット(1000→1くらいの割合)したので、味の酸度が低くなったのが大きな変化でした。
果たして来年度はどんなに地味な自殺行為を繰り広げることになるのか…全く無自覚な自分のチャレンジャー体質が今から恐ろしくて仕方ありません。

昨年、一昨年と同様、発送終了翌日は、ほとんど動かず、ただただ棒のように横たわっておりました。こんなにダラダラした栽培・発送でも、それなりに気を張っていたのだなと自分を労う一方、この程度で燃焼済みとはヤキが回ったなあという諦めも抱きつつ。


きっと、仕事というのはそういうものかもしれませんが…
続ければ続けるほど、言葉にできる感想は少なくなってきます。
作業はマンネリ化し、目に映るものの鮮度は薄れ、そしていずれは飽きがくる。

そう思っていました。

しかし現実は、全く違った景色が広がっていました。
どれだけ続けても、飽きることがないのです。
確かに面白みは例年減っています。どんどん疲れも溜まるようになってきました。
なのに、絶え間なく出てくるマイナス要因が、全く飽きに繋がらない。

仕事を広げることもなく、深みを思索する訳でもなく、ただただ、昨年と同じ作業を繰り返す。
そう出来る、させて貰えることに、薄い喜びを感じるようになりました。

出来ることなら、来年度も、
昨年度と同じように一喜一憂し、同じように失敗し、同じような日々を送れることを祈りつつ。

皆様、ありがとうございました。皆様のおかげです。
来年度もどうぞ、よろしくお願い致します。


ねつ野菜 根津喜明




※来年度の発送開始は、6月上旬からを予定しております。
状況は随時、このメールやフェイスブック等で発信致します。ご不明な点はいつでもお問い合わせください。
  1. 2018/02/10(土) 20:14:52|
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今頃謹賀新年かよ…

あけましておめでとうございます!

師走の暮れも三が日もすっ飛ばし、仕事始めも追い抜いて、気がつけば小正月目前。
こちらは毎年通り、時折飲酒を挟みながら、ぐったりとした年末年始を過ごしておりました。
毎週のメールや週替りパンフレットでお伝えしている通り、全国的な不作は当方も例外ではなく…というかほぼ直撃に近い形で食らっておりまして。10月あたりからの栽培は、連日「あっれー?? こんなはずじゃないんだけどなあ??」と首をかしげ続けておりました。

いやあ、げに恐ろしきは天候なり。
近隣の方々と生育状況を確認し合ってみるとよく分かるのですが、露地栽培における最大の肝は、当たり前ですがやはり天候なのだなと痛感する一年でした。
慣行栽培バリバリ、農薬化学肥料なんでもござれな方と同じ日に大根蒔いても、生育ほぼ一緒…というか双方ほぼ全滅という、ピースフルに大ダメージを負って妙な連帯感が生まれたり等、それなりに得るものもあったのですが、それらが実を結ぶのは果たしていつになることやら…というのも例年通り。愚痴っていられるだけ、まだましだということかもしれません。

とまれ、このブログもだんだん誰も望んでいない長文化がインフレを重ね、いよいよ更新が億劫になってまいりました。
そもそも、今回の更新も前回から一ヶ月以上。ペナルティ広告が出てからやっと更新するような状態は、なかなかどうして怠惰というか何と言うか…

うーん。今年からは、もう少しお気軽な更新を心がけます。
どうでも良い話などが増えるかもしれませんが、そこは寛大な心でご容赦頂ければ幸いです。

たとえばですね。
今年、初めて気付いたどうでも良いことなんですが…

わたくし、煮干しが好きで、おやつとしてよく購入するんですね。コタツの上に置いて、夜なんかにはひっきりなしにバリバリ齧っております。
そりゃもう、しょっちゅうバリバリやっているものですから、コタツ上の煮干しの袋、封をしている暇はないんですね。常にあけっぱなし。

で、ある時気がついた訳なんです。
最近、妙に煮干しが美味くないか? と。
味云々より、歯ごたえがやけにクリスピーで、どのお店で買っても安定のサクサク感。
こりゃどういうことだ。日頃の行いか? と思っていたら…
なんということはない、単に部屋が乾燥していただけだったんですね。
どうりで喉が痛い訳だ…

という訳で奥様。冬場のおやつ煮干しは、袋開けっ放しがベストコンディションですよ!!

…という本当にどうでも良いお話で、2018年の念頭の挨拶とさせて頂きます。
野菜セット、まだしつこく続いております。
目下注文激減中!!
ごらんの皆様。今がチャンスです!!というかいつもチャンスです!!何卒お助けを!!

えー…という訳で、皆様。毎年こんなんですみません!
本年もどうぞ、よろしくお願い致します!!
 
  1. 2018/01/12(金) 23:39:42|
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月刊ソトコト 1月号に掲載されました!

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天地がひっくり返ったと申しましょうか、
太陽が西から昇ったと申しましょうか、
カッパが丘に上がったと申しましょうか、

…えー。どえらいことです。

12月5日発売、月刊ソトコト1月号、特集『全日本リトルプレス図鑑』。
そこにまあ…図々しくもねつ野菜、乱入してしまいました。
しかも異例、というかほぼ狂気の6ページ。何が起きたんだよ一体…

えー、先程、全国誌の6ページに広告を出したらいくらかかるかちょっと調べてみたのですが、しばらく呼吸困難になりました。僕の全財産でも追いつかねぇ…

今回掲載して頂いたのは、「リトルプレス」の一例として、僕がいつも野菜セットの納品書に挟み込んでいる、あの妙な冊子。(未だにパンフレットと言い張り続けています)

野菜セットをお送りした方は既にご存知、要領を得ない作文を時代錯誤なモノクロプリンターで、激安のコピー用紙に適当に印刷して、適当に折り畳んだアイツです。
あれを全国誌のカラー6ページで紹介…何考えてんだ!アヴァンギャルドにも程があるよ!!

一体どんな内容になっているのか、気になる方も、そしてもちろん気にならない方も!
全国の書店に今月いっぱい、ねつ野菜がゲリラ的に潜伏しております。

木楽舎 月刊ソトコト1月号 『全国リトルプレス図鑑』 税込み823円
何卒、よろしくお願い致します!!


さて。らしくない話はここまでにしておきまして…


特集に加わるということは、当然わたくし、取材を受けております。
プロのクルーが我が家を訪れ、丁寧に取材をして頂いたのですが…

…今さらですが、謝らなくてはいけないことが、多々ございまして。

えー、まずはですね。

あの冊子、実はタイトルをつけるの忘れてまして…
表紙にねつ野菜と書いてあるのは、小学生が自分の持ち物に名前を付けるようなソレでして。
今回、流れで冊子名を「ねつ野菜」として頂きましたが…そりゃ表紙に書いてあれば当然、そう思いますよね。
いや、ホントすみません。今さら言い出せなくて…取材受けといて「冊子名とか無いです」とは、さすがに。

…という訳で、あの週替りパンフレット、冊子名は「ねつ野菜」となりました!!
命名主は月刊ソトコトさまです。なんか偉くなった気がする!!

今後は「ねつ野菜が送るねつ野菜に入っているねつ野菜」として、末永くご愛顧頂ければ幸いです!


えー、それに加えて。

取材クルーの皆様に、畑をご覧頂いた際、つい目に入ったハバネロを「じゃ、いっちゃいますか?」と軽い気持ちでお薦めしてしまいました…すみません。
そりゃ薦められたら、食べますよね。
取材、15分ほど中断させてすみません。
まさか、水のストックがほぼ無い状態だとは想像もしておらず…ああ。怒らないで!!まさか全員召し上がるとは!!

で、まだまだ続きまして。

我が家で冊子の取材中、たまたま頂き物のアケビがあったので、皆様にお薦めしたのですが…
ご存知の方もいらっしゃると思います。アケビって、可食部のほとんどが「種」なんですね。
そもそもお客様にお出しするような、上品なものじゃないんです。
その時点でもう、どうなんだという話なのですが…

で、当然「この種はどうするんですか?」とご質問を頂く訳で。
それに答えて「あー。普通に食っちゃいますよ。ガンガン飲んじゃうです」と、何食わぬ顔で言いましたが…

その後家族とその話をしたところ、一家全員「種なんか誰も飲まない」という驚くべき事実が発覚しまして。
ウソだろ…ずっと飲んでたよ。アレ、ダメなの?旨くもまずくもないけれど…だってほら僕、死んでないよ?

ああ。すみません。どうやらあれ飲まないみたいです。僕がおかしかったみたいです…申し訳ありませんでした。

と、まあ…
そんな数々の失礼を半日の間に矢継ぎ早に繰り出し、常人なら「二度と来るか!」と怒り心頭なところを、まるで仏のように寛大な心で包んで頂き、感謝の限りでございます。

いや実際、すごく丁寧で素晴らしい方々でした。プロのインタビューって凄いです。
もうですね。あの場で「じゃ、脱ぎましょうか」と言われてたら、たぶん脱いでました。

まともに話を聞いてもらえるのが嬉しくて、勝手に気分良くなって、色んなことを言いたい放題話して…
にも関わらず、辛抱強く聞いてくださり、丁寧に編み上げてくださり、その結果、
それはそれはもう、見事な記事にまとめて頂きました。もう完全に我が家の家宝です。ありがたいことです。

自分に中身がなくたって『表現したい』という、どこにも報われない、蓄積する思い。
それを、あまりに簡単な方法で成仏させることができる一例、という情報提供のつもりで取材を受けました。
僕のとった手段は、とても安っぽくて見栄えのしないものだけど、この方法で、僕と同じような思いを溜めていた誰かが楽になれたらいいなと、心から思います。

人によっては冗談に聞こえるかもしれませんが、
表現の出口が塞がれてしまうことで、死んでしまう人だっているのです。
ある種の方にとっては、表現の可否は食料と同じくらい、生きることに結びついています。
願わくば、出来るだけ早く、その悩みを抱える方々に届いて欲しいと祈っています。

そして…ひとりでも多く、野菜を注文して頂きたいと思っています(切実)!!
それなのに、今冬の野菜不足…あああああ!!タイミング悪すぎるよ!!
発送したい!されど在庫は超幸薄!!この千載一遇のチャンスに何なんだこの様は…ああもう、どうすりゃいいんだ!!

身に余る掲載に在庫稀少…師匠が走れば野菜は凍る。
吹き荒れる木枯らしとは反対に、脳内はキラウエア火山のように沸騰中!!
もはやどうしたらいいかわらかない12月のねつ野菜ですが、雑誌も野菜もネズミも冷気も、もう全部ひっくるめて皆様、どうぞよろしくお願い致します!!!
  
  
  1. 2017/12/04(月) 21:48:51|
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潔く白旗を掲げようではないか

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もう、どうしたものか。

伊那谷の気温、11月の頭から、スキーの直滑降よろしく下がること下がること。
一日、また一日と下がり続ける温度計を横目に、ストーブの灯油をチャージしたり、クラシックスタイルの豆炭コタツに火を入れたり等、皮膚感覚に従って淡々と進める人間様の冬支度。ああ…ミカン旨え。甘いリンゴも出揃って…

いや、そういうんじゃなくて。
野菜だよ野菜。

…ああ。直視したくない…

毎年のカレンダー通りに進めてきた冬作ですが、今年はあまりに冬の訪れが早く、生育不足も甚だしいと申しますか、有り体に言ってしまえば「ほぼ壊滅」。






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まあ、こんなんですわ。見るからに残念無念。
思えば11月の頭から…

「あれれ?ちょっぴり寒いかしら?」
「いやいやまだまだ大丈夫っしょ」
「おかしい…いや、来週には気温も回復するさ」
「…更に寒くなってねえか?」
「つーか…霜に負けてんじゃん」
「これ、もう育たないんじゃ?」
「あああああやべえよどうすんだよ」

(現実逃避開始)

「…いやあ、今年のリンゴ旨過ぎない?」
「それにしても日馬富士どうなんのかね」
「ウソ?!ファミマがコインランドリー始めんの?!」

…ああ。直視したくない…

これでも若輩ながら、数年はやってきてるんです。
肉眼で見ると眼球をやられてしまう、危険極まりないお天道さまに向かって「攻撃的な祈り」を繰り返すという、イタコ顔負けの念力スピリチュアルプレイで、冬場の生育をギリギリでこなしてきたんです。
だからねぇ…今年もねぇ…祈ればなんとかなると思ってたんですが…

あー。
もー。

ダメっす。今年全然っす!!
どーしよーもないっす。念力ぜんっぜん通じねえっすわ!!惨敗ですわ!!

まあ。しょうがない。
で、そうなってみると気になるのは近隣各所の路地畑。
僕みたいな素人とは違う百戦錬磨な皆様のこと、きっと上手いことスプリント初冬を切り抜けているのだろうなあ。悔しいなあ…

…あれ?
なんか、みんなヤバそう?

気になったのでちょこちょこインタビューを試みたのですが、どうやら我が村近辺、みんな同じように早すぎる冬の直撃を受け、ほとんどの冬作が惨敗模様。

…というのも、我が地域、お互いの畑がやんわりとした「相互監視下」にありまして。あそこの畑が○○をもう植えた、蒔いた等の噂は電光石火で地域に広がるんですね。もう室町時代からWifi完備。
で、結果なんとなーく作付の時期が皆さん似通ってしまう訳で。
そしてこういう季節的なアクシデントが発生すると、一網打尽で共倒れ…

フフフ…良かった。僕だけじゃなかった。

…って、なに安心してんだよ!!現状が変わる訳でもなし!!


うーん。
という訳で、今年のアブラナ系備蓄野菜(大根・カブ・キャベツ・白菜等)、かなり貧弱な品揃えとなりそうです…トホホ。
代わりに人参やネギ等、キャパ超えに近い作付をした野菜たちは飽和気味。
今年の冬は、いつにも増してアンバランス且つエッジの効いたセット内容になると思われます。

まあ…実際のところ大した出荷量ではないので、結局は足りちゃう気も…
いやいやいや!こんな時こそ目指せ在庫切れ!
追い詰められたダメ農家にトドメを刺すべく、皆様からの攻撃的なご注文、お待ちしております!!



  1. 2017/11/23(木) 23:38:55|
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Somethin' Else,Live Evil,A Night In Tunisia

きっとこれから、あちこちで「R.I.P」が流れて、タイムラインは濁流のようになるはずだから、その前に。

ジャズ喫茶Kanoyaのマスター、宇佐見さんが亡くなった。

僕は宇佐見さんの人となりを、よく知らない。
何だか私生活が色々とドラマティックなことになっていたらしいけど、僕にはよく分からないし、今後も別に、知ろうとも思わない。
本当のことを言えば、病気のことだって、あまり気にしていなかった。

僕にとって、宇佐見さんは、ジャズだ。

ジャズそのものだから、私生活なんて無くていい。
あのユーモア溢れる、飄々とした語り口も、個性も、本体のジャズを覆うアクセサリーだ。今でもそう思っている。

ジャズは、聞き手の音楽だ。
宇佐見さんは、そう教えてくれた。
もちろん、口では言ってない。そういう姿勢を、身をもって教えてくれた。

高校生の頃、恐る恐る足を踏み入れた駒ヶ根時代のKanoya。真っ白なワイシャツの第一ボタンまできちっと締めた宇佐見さんは、毅然とした態度でお客さんのリクエストを断っていた。僕は震え上がった。

キースジャレットは置かない。
ワルツフォーデビーは、頼まれても流さない。

当時は全くわからなかったジャズ。
電子音楽ばっかり聴いていた高校生に、その魅力は全く理解出来なかった。

初めてジャズを聴きます。教えてください。

宇佐見さんが僕に貸してくれたのは、名盤、キャノンボール・アダレイの「Somethin' Else」だった。

心して、自宅で聴く。
なんだか、フォーマルな音楽だなあ。おじさんが聴く音楽だなあ。
大名盤に対してこれほど失礼な態度もない。けれど、耳がやせっぽちな高校生の本音は、だいたいこんなものだろう。

宇佐見さんに、正直に打ち明けた。
枯葉、全然わからないです。
普段テクノ聴いてます。
もっと、激しく、めっちゃくちゃなやつがいいです、と。

失礼千万な高校生に宇佐見さんが貸してくれたのは、マイルス・デイヴィスの「Live Evil」だった。

改めて、心して、聴く。
高い楽器を振り回して、外国の大人たちがしっちゃかめっちゃかな音楽をやっていた。
これまで聴いた中で、一番訳の分からない音楽だった。
つかみ所の一切ない演奏。苦行の視聴時間が終わって一息ついた瞬間、ある事実を知って僕は愕然とし、降参した。
このCDは二枚組だったのだ。

なんか凄かったです、とだけ伝えて、宇佐見さんにCDを返却する。
それ以降、僕がCDを借りることはなかった。
ただその後も僕は、店の風景になりたくて、暇があればKanoyaに通い、ジャズを耳の穴に入れ続けた。

それから上京して、いろんな音楽を聴いた。
九十年代の東京は刺激的な音楽だらけで、ジャズはほとんど聴かなかった。ただ、今になって思えば、あらゆる曲の中にあるジャジーな旋律を追い続けていた、ような気がする。

それから十五年くらい経って、いきなり、ジャズしか聴かなくなってしまった。きっかけはない。
突然狂ったようにCDを買い、片っ端からジャズ喫茶に通い始めた。聴くだけでは満足いかなかった。毛穴からジャズを吸いたかった。遅すぎる中毒症状だった。

人によって、ふさわしい時期というのはあるのだろう。
百枚、二百枚と聴き続けるうちに、だんだん自分の好き嫌いや、傾向がわかってくる。
どうやら僕がジャズに求めていたのは、「不良性」だった。そして、その不良性は、とりもなおさず、Kanoyaが湛えていた雰囲気、そのものだった。

農業に集中するため、ほとんどのCDを売って、伊那に戻ってきた。駒ヶ根Kanoyaが終わったという噂は既に聞いていたので、もう、伊那谷に音楽を求めるつもりは無かった。
おかげでずいぶん、農作業に集中できた。

ある日、妻と伊那市駅前を散歩していたら、目の前に忽然とKanoyaが現れた。
なぜ今、なぜ伊那に。幻覚か?
妻の手を引き、店内へ。間違いない。建物は別だけど、店内のオブジェは変わらない。
奥からマスターが出てくる。少し歳をとったように見える。僕と妻は黙ってコーヒーを注文した。野暮だと思い、名乗らなかった。

「久しぶりじゃーん」

宇佐見さんは僕を覚えていた。
止まった時計が動き出した、って、月並みな表現だけど、本当にそう感じた。

改めて話してみると、やはり時間が経っていた。
僕は音楽だのゲージツだのとは距離をおき、農作業に集中する日々を送っていた。
伊那に移ったKanoyaは、音飛びするプレーヤーで、CDばかりをかけていた。かつてはピリッピリだった宇佐見さんは少し、いや、結構ヨレヨレになっていて、よく笑う愉快なおじさん、みたいになっていた。
それはそうだよな。みんな、当時のままではいられないよな。
大好きだったジンジャーエールはメニューから消えていて、ストーブに当たりながらニコニコとミカンを勧めてくれた宇佐見さんを見て、複雑な気持ちになったことを覚えている。

ある日、宇佐見さんがSNSを始めた。
飄々とした口調そのままに連ねられた投稿は瞬く間に広がり、ロックやブルースを愛する常連さんたちと繰り広げられる、丁々発止の愉快なやりとりが、連日繰り返されていた。

いいなあ。楽しそうだな。でもさあ。

それさ、ジャズじゃねえじゃん。

ロックもブルースも結構だよ。
歳とって、色々なご苦労があったんだろうけど、でもさあ。
さすがにジャズを忘れるほど、歳とっちゃったの?

真夜中、急に腹が立って、我が家に残った音源を漁る。
思いついた音源をピックアップして並べ替え、僕はCDを一枚焼いた。

2曲目に、爆弾を仕掛けた。他の曲は、その爆弾のための、演出みたいなものだ。
宇佐見さん。この曲が、僕のジャズです。
スルーされちゃうかな。でも、まあ、一応。

翌日のKanoya。
僕は適当を装って、CD焼いてきたんすよね。ここでかけてもらっていいっすか、と渡す。

宇佐見さんはちょっとウザそうに、かかるかなあ、焼いてきたやつ入れると、音止まっちゃうんだよな、と言いながら、トレイに僕のCDを入れる。

1曲目、ビルエヴァンス。「Funkallero」(The Bill Evans Album)
宇佐美さんは洗い物をしながら、「いい選曲じゃん」と言ってくれた。嬉しい。
けれど、まだまだ。問題は次だ。
宇佐美さん。これが、僕の知る限り、最も不良性の高いジャズです。僕の二十年の結果です。



2曲目。ソニー・ロリンズ「A Night In Tunisia」(A Night At The Village Vanguard)



洗い物をしていた宇佐美さんが、急に真顔になって、こちらを見た。
互いにしばらく無言で目を合わせ、我に返った宇佐美さんは、吹き出した。

「おい。男同士で見つめ合っちゃったよ」

そして、洗い物の手を止めて、隣にいた奥さんに大声で言う。

「あー。もうさ。今日は店閉めちゃうか。やってられん」

残りの曲がどういう印象になるのか、もうどうでも良かった。その日はちょっと早めに店を出てバイトに行った。少し、感極まってしまった。

宇佐美さん。
なんだかあの時、宇佐美さんの血管にジャズが戻ってくる瞬間が見えた気がして。
僕、お店通っていて、あの瞬間が一番嬉しかったです。

その時期あたりから、ジャズ喫茶として爆進を始めたKanoyaは、いつ行っても、本当にわくわくする場でした。

最後の一年、チラシ書きでお世話になりましたが、まるで関係者になったみたいで、いつもちょっと誇らしい気持ちでした。

本人の前では、絶対にその人を誉めない宇佐美さんだったけど、一回、ミスったことがありましたよね。

ある演奏者のことを宇佐美さんがボロクソに言っていた時、僕が急に、

「で、センスあると思いますか?」
と尋ねたの、覚えてますか?
あれね、演奏者のことを訊いたんですよ。

あの時宇佐美さん、こっちを向いて急に真顔になって。

「ある。あるよ」

って言いましたよね。やっちゃいましたね。

僕、もうね。
それ、墓場まで持って行こうと思ってますよ。
ありがとうございました。一生の宝です。





---mix vol.1------------

01 Bill Evans - Funkallero
02 Sonny Rollins - A Night In Tunisia
03 J.A.M/産業革命
04 Charles Mingus - Moanin
05 Oscar peterson - Cakewalk (Noreen s Nocturne)
06 Miles Davis - Prince Of Darkness
07 indigo jam unit - Sepia
08 Roland Kirk - Domino
09 Kenny Burrell - Blue Bossa (1979)
10 Consolacao Tenorio Jr
11 HIGH FIVE - OJOS DE ROJO




zek宇佐美さん2
  1. 2017/11/03(金) 18:05:06|
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